インターネット無料の賃貸物件とは、月々の通信料を支払うことなくインターネットを利用できる物件のことです。
この種の賃貸は、手続きの手間が省けるといったメリットがある一方で、通信速度が遅くなる可能性などのデメリットも存在します。

この記事では、インターネット無料の賃貸物件の仕組みから、メリット・デメリット、契約前に確認すべき注意点、そして通信速度に問題を感じた際の対処法までを詳しく解説します。

そもそも「インターネット無料」の賃貸物件ってどんな仕組み?

インターネット無料の賃貸物件の仕組みは、物件の大家や管理会社が建物全体で一括してインターネット回線の契約を結び、それを各戸の入居者に提供するというものです。
この形態は、特にアパートやマンションといった集合住宅で多く見られます。

大家が回線事業者と法人契約を結ぶことで、個人で契約するよりも割安な料金でサービスを導入できるため、物件の付加価値として提供されるケースが増加しています。
入居者は、すでに設備が整っているため、個別に契約手続きや工事を行うことなくインターネットを利用開始できるのが特徴の賃貸マンションです。

「インターネット対応」物件との明確な違い

インターネット無料物件と混同されやすいものにインターネット対応物件があります。
インターネット対応とは、建物の共用部までインターネット回線が引き込まれている状態を指します。
しかし、各部屋まで回線が配線されているわけではないため、実際にインターネットを利用するには、入居者自身がプロバイダを選んで契約し、部屋への引き込み工事を行う必要があります。

つまり、対応物件では、回線契約や工事費用、月額利用料が別途発生します。
無料で利用できるわけではないという点が、明確な違いです。

インターネット無料の賃貸物件に住む3つのメリット

インターネット無料の賃貸物件には、多くの魅力的なメリットがあります。
特に、通信費の節約や入居後すぐにインターネットが使える利便性は、一人暮らしを始める人や引っ越しの手間を減らしたい人にとって大きな利点です。

近年では新築物件でもこの設備が標準的になりつつあり、物件選びの重要なポイントになっています。
ここでは、具体的にお得なメリットを3つに分けて紹介します。

メリット1:月々の通信費を節約できる

最大のメリットは、月々の通信費を大幅に節約できる点です。
個人で光回線を契約すると、プロバイダ料金と合わせて毎月4,000円から6,000円程度の費用が発生します。
インターネット無料物件の場合、この費用がかからないため、年間に換算すると数万円単位の節約につながります。

物件によっては、その分の費用が家賃に上乗せされている可能性も否定できませんが、周辺の類似物件と家賃を比較した場合、多くはトータルコストで割安になる傾向があります。
固定費を抑えたい人にとっては、非常に経済的な選択肢です。

メリット2:入居したその日からネットが使える

引っ越し当日からすぐにインターネットを利用できる点も大きなメリットです。
通常、個人でインターネット回線を契約する場合、申し込みから開通工事まで数週間から1ヶ月以上かかることも珍しくありません。
特に引っ越しシーズンである3月や4月は、工事業者の予約が混み合い、さらに時間がかかる可能性があります。

インターネット無料物件であれば、すでに設備が整っているため、そのような待ち時間は一切ありません。
入居したその日からWi-Fiに接続し、新生活をスムーズにスタートさせることが可能です。

メリット3:面倒な回線契約や工事の手間がかからない

インターネット回線の契約手続きは、数ある事業者やプランの中から自分に合ったものを選ぶ必要があり、複雑で時間がかかります。
インターネット無料物件では、このような面倒な申し込み手続きが一切不要です。

また、個人で契約する際に必要な開通工事の立ち会いも必要ありません。
煩雑な手続きや業者との日程調整といった手間を省けるため、多忙な人やインターネットの契約に不慣れな人でも、手軽にネット環境を整えることができます。
時間と労力を節約できる点は、大きな魅力の一つです。

知っておきたい!インターネット無料賃貸の3つのデメリット

インターネット無料の賃貸物件は多くのメリットがある反面、事前に理解しておくべき注意点も存在します。
特に通信速度やサービスの選択肢がないといった点は、利用スタイルによっては大きなデメリットになり得ます。
これらのデメリットを知らないまま契約すると、入居後に不便を感じる危険性も考えられます。

契約後に後悔しないためにも、以下に挙げる3つのデメリットをしっかりと確認しておきましょう。

デメリット1:利用者が多い時間帯は通信速度が遅くなりやすい

インターネット無料物件の多くは、一つのインターネット回線を建物全体の入居者で共有する仕組みを採用しています。
そのため、夜間や休日など、多くの人が同時にインターネットを利用する時間帯には回線が混雑し、通信速度が著しく低下することがあります。

Webサイトの閲覧程度であれば問題ないかもしれませんが、高画質の動画視聴やオンラインゲーム、大容量データのダウンロードなどを行う際に、速度が遅いと感じる可能性が高いです。
安定した回線速度を常に求める人にとっては、大きなストレスの原因になり得ます。

デメリット2:利用したい回線やプロバイダは選べない

物件にはすでに特定のインターネット回線とプロバイダが導入されているため、入居者はそれを利用するしかありません。
自分で通信事業者を選んだり、より高速なプランに変更したりすることは基本的に不可能です。
特定の事業者との契約で受けられるスマートフォンのセット割引などを利用したいと考えている人や、通信品質にこだわりがある人にとっては、この選択の自由がない点がデメリットになります。

もし提供されている回線の品質やサービス内容に不満を感じても、個人で変更することは困難です。

デメリット3:家賃にインターネット料金が含まれている場合がある

「無料」と謳われていても、実際にはインターネット設備の維持費や利用料が家賃に上乗せされているケースがほとんどです。
そのため、インターネットを全く使わない人や、自分のスマートフォンだけで十分という人にとっては、かえって割高になる可能性があります。

また、通信速度に不満があって個人で別途回線を契約した場合、物件のインターネット料金と二重に支払うことになります。
備え付けの設備を使わないからといって、家賃からその分の料金を引いてもらうことはできず、退去時の解約手続きが不要な反面、柔軟な対応は期待できません。

メリット・デメリットから考える!インターネット無料賃貸がおすすめな人

インターネット無料の賃貸物件は、その特性からすべての人に適しているわけではありません。
自身のインターネットの使い方やライフスタイルを考慮し、メリットがデメリットを上回るかどうかを判断することが重要です。

例えば、大阪や沖縄など地域を問わず、手軽さとコストパフォーマンスを重視する人には魅力的な選択肢となり得ます。
ここでは、どのような人にインターネット無料物件が向いているのか、具体的なケースを挙げて解説します。

動画視聴やSNSが中心で通信速度をあまり重視しない人

インターネットの主な用途が、Webサイトの閲覧、SNSのチェック、標準画質の動画視聴といったライトな使い方である人には、インターネット無料物件が適しています。
これらの用途であれば、多少の速度低下があったとしても、大きなストレスを感じることは少ないでしょう。

スマートフォンやタブレット、テレビでの動画鑑賞が中心で、オンラインゲームや大容量ファイルの送受信を頻繁に行わないのであれば、提供される通信環境で十分に満足できる可能性が高いです。

インターネットの契約手続きを面倒に感じる人

回線事業者の比較検討や申し込み、料金プランの選択、開通工事の立ち会いといった一連の手続きを煩わしく感じる人にとって、インターネット無料物件は非常に魅力的です。
特に、初めて一人暮らしをする学生や新社会人、引っ越し作業で忙しい人など、複雑な手続きに時間をかけたくない場合には最適な選択肢となります。

入居後すぐにインターネットが使える手軽さは、他の何にも代えがたいメリットと感じられるはずです。

引越し費用や毎月の固定費を少しでも抑えたい人

月々の通信費がかからないため、家計の固定費を削減したい人にとって、インターネット無料物件はお得な選択です。
通常は数万円かかることもある回線の初期工事費用も不要なため、引っ越し全体のコストを抑えることにも繋がります。

毎月の支出をできるだけシンプルに管理したい人や、節約を重視する学生、若手の社会人には特におすすめです。
家賃と通信費を合算したトータルコストで物件を比較検討する際に、大きなアドバンテージとなります。

こんな人は注意!インターネット無料賃貸が向いていない人

一方で、インターネット無料の賃貸物件がライフスタイルに合わない人もいます。
特に、通信の速度や安定性を業務や趣味で高いレベルで求める場合、物件の設備では満足できない可能性が高いです。

契約後に「こんなはずではなかった」と後悔しないために、どのような人が向いていないのか、具体的な注意点とともに確認していきましょう。
自分の利用目的と照らし合わせて慎重に判断することが求められます。

オンラインゲームや高画質動画の配信を快適に楽しみたい人

オンラインゲーム、特に一瞬の遅延が勝敗を分けるような対戦型のゲームをプレイする人には、インターネット無料物件は不向きです。
多くの住民と回線を共有するため、通信の遅延(ラグ)や回線切断が発生しやすくなります。

また、4Kなどの高画質動画をストリーミングで視聴したり、自身でライブ配信を行ったりする場合も、安定した速い通信速度が求められるため、物足りなさを感じるでしょう。
快適な環境で楽しみたいのであれば、個人で高速な光回線を契約する方が賢明です。

在宅ワークで安定した高速通信が必須な人

在宅ワークやリモートワークで日常的にインターネットを利用する人も注意が必要です。
頻繁なビデオ会議、大容量のデータファイルの送受信、クラウドサービスへのアクセスなど、業務には安定した通信環境が不可欠です。
回線が混雑する時間帯に通信が不安定になると、業務に直接的な支障をきたす恐れがあります。

仕事で高いパフォーマンスを維持するためには、通信速度や安定性が保証された環境が望ましいため、インターネット無料物件は避けた方が無難かもしれません。

自分で好きな回線事業者やプロバイダを選びたい人

特定の回線事業者が提供するサービスを利用したいと考えている人には、インターネット無料物件は向いていません。
例えば、利用中のスマートフォンとのセット割引を適用させたい場合や、特定のプロバイダが提供するセキュリティサービスやサポート体制に魅力を感じている場合などです。
これらの物件では事業者を自由に選ぶことができないため、希望するサービスを受けることができません。

サービスの選択肢にこだわりがある場合は、個別契約が可能な物件を探す必要があります。

契約してから後悔しないためのチェックポイント

インターネット無料の賃貸物件を選ぶ際には、契約前にいくつか確認しておくべき重要なポイントがあります。
これらの点を事前に把握しておくことで、入居後の「速度が遅い」「思ったように使えない」といったトラブルを防ぐことにつながります。

物件の内見時や不動産会社に問い合わせる際に、インターネット環境に関して必要なものをリストアップし、漏れなく確認するように心掛けましょう。

導入されている回線の種類(光回線かなど)を確認する

最も重要なチェックポイントは、建物に導入されているインターネット回線の種類です。
通信速度は回線の種類に大きく左右されるため、必ず確認しましょう。
現在主流となっているのは高速通信が可能な「光回線(光ファイバー)」ですが、物件によっては「CATV(ケーブルテレビ)回線」や「ADSL回線」が使われている場合もあります。

特にADSL回線は光回線に比べて速度がかなり劣るため注意が必要です。
快適なインターネット環境を望むのであれば、光回線が導入されている物件を選ぶことが推奨されます。

最大通信速度はどれくらいか聞いておく

回線の種類と合わせて、その回線の最大通信速度も確認しておくと良いでしょう。
「最大1Gbps」といったように、理論上の最高速度が定められています。
ただし、この数値はあくまでベストエフォート型(最大限の努力はするが速度を保証するものではない)の理論値であり、実際の利用速度(実測値)はこれよりも低くなるのが一般的です。

それでも、最大通信速度は回線のポテンシャルを示す一つの指標になります。
複数の物件で迷った際の比較材料として、不動産会社に聞いておくことをお勧めします。

Wi-Fiルーターは自分で用意する必要があるか確認する

部屋にインターネット回線が引き込まれていても、スマートフォンやノートパソコンなどを無線で接続するためのWi-Fiルーターが設置されていないケースがあります。
その場合、入居者自身でWi-Fiルーターを購入し、設置する必要があります。
内見の際に、各部屋にルーターが備え付けられているか、もしくはモデムやONUにルーター機能が内蔵されているタイプかを確認しておきましょう。

自分で用意する必要がある場合は、引っ越しに合わせて準備しておくことで、入居後すぐに無線LAN環境を整えられます。

もし通信速度が遅いと感じたら?自分でできる対処法を紹介

インターネット無料の賃貸物件に入居後、もし通信速度が遅いと感じた場合でも、すぐに諦める必要はありません。
管理会社に連絡する前に、自分で試せる簡単な対処法がいくつかあります。
多くの場合、接続機器の一時的な不具合や接続方法の見直しで改善することがあります。

ここでは、専門的な知識がなくてもできる対処法を紹介しますので、まずは落ち着いて試してみてください。

Wi-Fiルーターや接続機器を再起動してみる

通信速度が遅いと感じたときに、まず試すべき最も簡単な対処法は、通信機器の再起動です。
Wi-Fiルーターや、壁のLANポートにつながっているモデム、ONUといった機器は、長時間連続で稼働していると内部に熱がこもったり、アクセスログが溜まったりして動作が不安定になることがあります。

一度、これらの機器の電源コードをコンセントから抜き、数分待ってから再度差し込んで再起動させてみましょう。
これだけで通信状況がリフレッシュされ、速度が改善することがよくあります。

LANケーブルを新しい規格のものに交換する

パソコンなどを有線で接続している場合、使用しているLANケーブルが原因で速度が出ていない可能性も考えられます。
LANケーブルには「カテゴリ(CAT)」という規格があり、古い規格のものだと高速通信に対応できません。
ケーブルの差し込み口付近やケーブル自体に「CAT5」などと印字されているので確認してみてください。

「CAT5e」以上の規格であれば問題ありませんが、もし「CAT5」以前のものを使っている場合は、新しい規格のケーブルに交換することで速度が改善されることがあります。

それでも改善しない場合は管理会社に相談する

自分でできる対処法を試しても通信速度が改善しない場合は、物件の大家さんや管理会社に連絡して相談しましょう。
自分だけの問題ではなく、建物全体のインターネット設備に何らかの不具合が発生している可能性や、契約している回線プラン自体が現在の利用状況に見合っていない可能性も考えられます。

具体的な状況(いつから、どの時間帯に、どのくらい遅いかなど)を詳しく伝えることで、原因の特定や解決に向けてスムーズに対応してもらえる可能性が高まります。

最終手段として個人で別途回線を契約する

管理会社に相談しても状況が改善されず、どうしても通信速度に満足できない場合の最終手段として、個人で別途インターネット回線を契約する方法があります。
ただし、この方法を選ぶ前には、まず物件の管理規約で個別の回線引き込み工事が許可されているかを確認する必要があります。

許可が下りれば、自分で好きな通信事業者を選んで高速な光回線などを契約できますが、工事費や月額利用料はすべて自己負担となります。
費用と手間はかかりますが、通信環境を根本的に改善できる唯一の方法です。

まとめ

インターネット無料の賃貸物件は、通信費の節約や手続きの手軽さといった大きなメリットがある一方で、通信速度が不安定になりやすいというデメリットを抱えています。
そのため、契約前には回線の種類や最大通信速度を確認することが重要です。

もしWi-Fiの電波が弱い場合は、市販の中継器を設置することで改善する可能性もあります。
また、建物で回線を共有する特性上、基本的なセキュリティ対策は必須です。
ウイルス対策ソフトを導入するなど、各自でセキュリティ意識を持つことが求められます。