賃貸物件の退去時には、管理会社や大家と一緒に部屋の状態を確認する「退去立会い」が行われます。
スケジュールが合わないなどの理由で、この立会いに行かないと考える人もいるかもしれません。
しかし、退去立会いをしない場合、思わぬトラブルに発展するリスクがあります。
この記事では、立会いの重要性や、しない場合に起こりうること、そしてその後のトラブルを避けるための注意点について解説します。
退去後のトラブルを避けるために退去立会いは原則実施すべき

退去立会いは、原状回復費用の負担割合を巡る貸主と借主間のトラブルを防ぐために、原則として実施すべきものです。故意や過失でつけた傷の修繕費用は借主負担となりますが、どこまでがその範囲なのかという認識は、双方で異なる場合があります。
立会いの場で一緒に部屋を確認することで、その認識のずれを解消し、お互いが納得の上で精算を進められます。不要だと自己判断で欠席すると、後々不利益を被る可能性があるため、特別な事情がない限りは参加することが賢明です。
退去立会いをしない場合に起こりうる3つのリスク

退去立会いに参加しないという選択は、いくつかのリスクを伴います。
最も懸念されるのは、原状回復に関する費用を一方的に請求されることです。
また貸主側とのやり取りが煩雑になったり、返還される敷金の額について交渉の機会を失ったりする可能性も高まります。これらのリスクを事前に把握しておくことは、立会いの重要性を理解し、適切な判断を下すうえで役立ちます。
身に覚えのない傷で修繕費を請求される可能性がある
退去立会いをしない場合、貸主側のみで室内の状況確認が行われます。
その結果、入居前から存在していた傷や、普通に生活するうえで生じる経年劣化による損耗まで、借主の負担として修繕費を請求される恐れがあります。
立会いに参加していれば、その場で「この傷は入居前からありました」と主張したり、経年劣化であることを確認したりできますが、不在の場合は反論の機会がありません。貸主側の判断がすべてとなり、不当に高額な費用を請求されても、後からそれを覆すのは困難になります。
管理会社とのやり取りが電話やメールのみになり手間がかかる
退去立会いに参加すれば、疑問点や不明点をその場で担当者に直接質問し、即座に解決できます。
しかし立会いをしない場合は、すべてのやり取りが電話やメールでの連絡となります。
修繕箇所の確認のために写真の送付を依頼したり、見積もり内容について何度も電話で問い合わせたりと、かえってコミュニケーションに時間と手間がかかることがあります。また文書や写真だけでは細かいニュアンスが伝わりにくく、認識の齟齬が生まれやすい点もデメリットです。
結果的に、問題解決が長引いてしまうケースも少なくありません。
敷金の返還額について一方的に決められてしまう
退去立会いは、原状回復費用を確定させ、敷金の精算額を決めるための重要なプロセスです。
立会いの場でどの程度の修繕が必要か、その費用はいくらか、そして貸主と借主の負担割合はどうなるのかといった内容が話し合われます。
この機会を放棄するということは、敷金の精算内容に関する交渉の権利を失うことと同義です。
貸主側が作成した見積もりや精算内容が一方的に通知され、それに従うしかなくなります。その結果、本来であれば返還されるべき敷金が大幅に減額されてしまう可能性が高まります。
退去立会いをしないことで得られる2つのメリット

多くのリスクがある一方で、退去立会いをしないことにはいくつかのメリットも存在します。
特に時間的な制約がある人や、対面での交渉に苦手意識がある人にとっては、立会いを省略することが都合の良い場合もあります。
具体的には、引越し当日のスケジュールに余裕が持てる点や、担当者と顔を合わせる精神的な負担を避けられる点が挙げられます。
引越し当日のスケジュールに余裕が生まれる
引越し当日は、荷物の搬出作業や役所での手続き、新居での荷解きなど、やるべきことが多く非常に慌ただしい一日になります。退去立会いは通常30分から1時間程度の時間を要するため、この時間を別の作業に充てることが可能です。
特に退去と入居が同日に行われる場合や、遠方への引越しで移動に時間がかかるケースでは、立会いを省略することでスケジュールに大きな余裕が生まれます。
時間に追われることなく、落ち着いて引越し作業を進めたい人にとっては、これは大きなメリットと感じられるでしょう。
担当者と対面する精神的な負担や気まずさがない
部屋の傷や汚れについて、管理会社の担当者から直接指摘されることに気まずさや精神的なストレスを感じる人もいます。特に室内を汚してしまった自覚がある場合や、担当者が高圧的な態度を取るタイプだった場合、立会いの場が苦痛に感じることも考えられます。
退去立会いをしなければ、このような対面でのやり取りをすべて回避できます。電話や書面での事務的な連絡のみで手続きが進むため、コミュニケーションに伴う心理的な負担を軽減できる点はメリットと言えます。
そもそも退去立会いとは?目的と当日の流れを解説

賃貸マンションなどの物件から退去する際に行われる退去立会いとは、借主が明け渡す部屋の状態を、貸主側(大家や管理会社の担当者)と借主が一緒に確認する作業を指します。この立会いの主な目的は、原状回復の範囲と費用負担を双方合意の上で決定し、後のトラブルを未然に防ぐことです。
当日の大まかな流れを事前に理解しておくことで、落ち着いて対応でき、スムーズに手続きを進めることが可能になります。
原状回復の範囲を入居者と貸主双方で確認することが目的
退去立会いの最も重要な目的は、原状回復義務の範囲を貸主と借主の双方で確認し、費用負担について合意することです。借主は、故意や過失、通常の使用方法を超えるような使い方によって生じさせた損耗を元に戻す義務を負います。一方で、普通に生活していて発生する壁紙の日焼けや家具の設置跡などの経年劣化は、貸主の負担となります。
国土交通省のガイドラインでは、設備の耐用年数も考慮されており、例えば壁紙の価値は6年でほぼなくなるとされています。立会いの場で、どの損傷がどちらの責任範囲なのかを明確にすることが公正な費用負担につながります。
室内の確認から敷金精算までの基本的な手順
退去立会いの当日は、まず管理会社の担当者と待ち合わせ、部屋に入ります。
その後、壁や床、天井の傷や汚れ、キッチン・トイレ・浴室などの水回りの状態、備え付けのエアコンや給湯器といった設備の動作状況などを一緒に見て回りながら確認します。
修繕が必要な箇所が見つかった場合、それが借主の負担となるかどうかの判断が行われます。
すべての確認が終わると、修繕費用の見積もりが提示され、その内容について説明を受けます。双方が合意に至れば、後日、敷金から修繕費用を差し引いた金額が指定口座に振り込まれるという流れが一般的です。
退去立会いで不要な費用を請求されないための5つのポイント

退去立会いは、ただその場にいるだけでは十分ではありません。不当な費用請求を避け、敷金を適切に返還してもらうためには、事前の準備と当日の冷静な対応が不可欠です。
あらかじめ部屋を清掃しておく、契約書や入居時の写真といった証拠を用意するなど、いくつかのポイントを押さえて臨むことで貸主側との交渉を有利に進め、納得のいく結果を得やすくなります。
事前に部屋の隅々まで掃除をしておく
退去前には、部屋全体をできる限り綺麗に掃除しておくことが重要です。
特にキッチンの油汚れ、換気扇のホコリ、浴室や洗面所のカビ・水垢、トイレの黄ばみなどは、汚れが蓄積しやすい場所なので念入りに清掃します。
掃除を丁寧に行うことは、賃貸契約書に定められた原状回復義務を履行し、貸主との良好な関係を維持する上で有効です。また部屋が清潔な状態であれば、貸主側に「丁寧に使ってくれた」という良い印象を与え、立会い時のやり取りが円滑に進みやすくなる効果も期待できます。
入居時の契約書や室内の写真を手元に用意する
退去立会いに臨む際は、入居時に交わした賃貸借契約書と、入居直後に撮影した部屋の写真を必ず手元に用意しておきましょう。契約書には原状回復に関する特約事項が記載されている場合があるため、事前に内容を再確認しておく必要があります。
また入居時に撮影した写真は、指摘された傷や汚れが元々あったものであることを証明するための強力な証拠となります。これらの客観的な資料を提示することで、身に覚えのない請求に対して根拠を持って反論でき、不当な費用負担を回避することにつながります。
家族や友人に同行してもらい一人で臨まない
退去立会いには、できる限り一人ではなく、家族や友人など第三者に同行してもらうことをお勧めします。一人で専門知識を持つ担当者と対峙すると、相手のペースに飲まれてしまったり、言われるがまま不利な条件に同意してしまったりする可能性があります。
第三者がその場にいることで、客観的な視点から部屋の状態を確認してもらえるだけでなく、精神的な支えにもなります。万が一トラブルに発展した際には、状況を見ていた証人としての役割も期待でき、冷静な判断を保つためにも同行者の存在は大きな助けとなります。
会話を記録するために録音の許可を取っておく
立会い時の担当者との会話は、後から「言った、言わない」といった水掛け論になるのを防ぐため記録として残しておくことが有効です。トラブル防止のためにも、ボイスレコーダーやスマートフォンの録音機能を使うことを検討しましょう。
ただし、相手に無断で録音すると心証を悪くし、関係がこじれる原因にもなりかねません。
そのため、録音を開始する前に「後の確認のために、会話を録音させていただいてもよろしいでしょうか」と、必ず相手に許可を求めるようにしましょう。
承諾を得て録音することで、合意内容を正確に記録でき、万一の際の証拠となります。
精算書はその場でサインせず持ち帰って内容を確認する
退去立会いの最後に、修繕費用の内訳や負担額が記載された精算書や確認書への署名・捺印を求められるケースがよくあります。しかし、提示された内容に少しでも疑問があったり、納得できなかったりする場合には、その場で安易にサインしないことが極めて重要です。
一度サインをしてしまうと、その内容にすべて同意したと見なされ、後から異議を申し立てることは非常に困難になります。
必ず「持ち帰って内容を検討します」と伝え、書類を受け取るだけに留めましょう。
そして、自宅で契約書やガイドラインと照らし合わせ、冷静に内容を精査する時間を持つべきです。
どうしても退去立会いに行けないときの対処法

遠方への引越しや仕事の都合など、やむを得ない事情で指定された日時に退去立会いへ行けないことがある場合でも、何も連絡せずに欠席するのは避けるべきです。
無断で欠席すると、貸主側の言い分がすべて認められてしまうリスクが高まります。
まずは管理会社に事情を説明して日程を再調整できないか相談したり、それが難しい場合は信頼できる代理人を立てたりするなど、自身の不利益を最小限に抑えるための対処法を検討することが大切です。
管理会社に連絡して日程を再調整できないか相談する
退去立会いの日程がどうしても都合が悪いと分かった時点で、できるだけ早く管理会社や大家に連絡を入れ、日程を変更できないか相談してみましょう。引越しの繁忙期でなければ、ある程度柔軟に対応してもらえる可能性は十分にあります。
鍵の返却と立会いを別日に行う、平日の夜や早朝に対応してもらうなど代替案を提示してくれるかもしれません。
一方的に行けないと決めるのではなく、まずは相談という形でコミュニケーションを取ることが重要です。早めの連絡は相手側のスケジュール調整にもつながり、円満な解決を図りやすくなります。
信頼できる家族や友人に代理人として参加を依頼する
日程の再調整が困難な場合は、自分の代わりに立会いに出席してもらう代理人を立てるという方法があります。代理人は、両親や兄弟、信頼できる友人が適任です。
代理人を立てることを決めたら、事前に管理会社にその旨を連絡し、委任状が必要かどうかを確認しておきましょう。
退去時の原状回復で困らないために!入居直後に必須の点検調査チェックポイントも合わせてぜひご覧ください。
まとめ
退去立会いは、原状回復に関する費用負担を公正に決定し、敷金返還をめぐるトラブルを未然に防ぐために、原則として参加すべき重要な手続きです。
立会いをしない場合、身に覚えのない傷の修繕費を請求される、敷金の返還額を一方的に決められるといったリスクを負うことになります。
どうしても参加できない事情がある場合でも、日程の再調整を相談したり、信頼できる代理人を立てたりといった対処が求められます。
立会いに臨む際は、事前の掃除や資料の準備を万全にし、当日は冷静に内容を確認することで、不要な費用負担を避け、円満な退去を実現させましょう。
