空室対策に温水洗浄便座!マンションのトイレへの取り付け費用と手順

賃貸物件の空室対策として、温水洗浄便座の設置は入居者の満足度を高め、物件の競争力を向上させる効果的な手段です。
入居者アンケートでは常に人気の設備として上位にランクインしており、その有無が物件選びの決め手となるケースも少なくありません。

この記事では、温水洗浄便座が空室対策に有効な理由から、設置前に確認すべきポイント、DIYで取り付ける場合の手順と費用、専門業者に依頼した場合の相場、さらには賃貸物件に最適な製品の選び方まで、オーナーが知りたい情報を網羅的に解説します。

目次

温水洗浄便座が空室対策として効果的な理由

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温水洗浄便座は、今や多くの家庭で普及しており、賃貸物件においてもその需要は年々高まっています。
単なる快適性を追求するだけでなく、衛生面への意識向上も背景にあり、入居者が物件に求める基本的な設備の一つとして認識されつつあります。

他の物件との差別化を図り、入居希望者の内見のきっかけを作る上で、この設備の有無は重要な要素となります。
費用対効果の高い空室対策として、その導入を検討する価値は十分にあります。

入居者アンケートで常に上位の人気設備

各種調査機関が実施する入居者アンケートにおいて、温水洗浄便座は「この設備があれば家賃が高くても決まる」といった項目で常に上位に位置しています。
これは、一度その快適さを知ると、ない生活には戻れないと感じる人が多いことを示唆しています。

特に単身者向け、ファミリー向けを問わず幅広い層から支持されており、物件の付加価値を大きく高める要素です。
他の設備と比較して比較的低コストで導入できるにもかかわらず、入居者の満足度に直接的に貢献するため、費用対効果の高い投資と言えます。
市場のニーズに的確に対応することが、空室期間の短縮につながります。

物件検索サイトで必須条件にする人も増加

近年、入居希望者が賃貸物件を探す際、インターネットの物件検索サイトを利用するのが一般的です。
その多くには、希望する設備を絞り込む機能があり、「温水洗浄便座」を必須条件として検索する人が増加しています。
この設備がないというだけで、物件が検索結果に表示されず、潜在的な入居希望者の目に触れる機会すら失ってしまう可能性があります。

特にトイレは毎日使用する空間であるため、入居者のこだわりが強い箇所です。
旧来の標準サイズの便器や一体型トイレでなくても後付けが可能な場合が多いため、未設置の場合は導入を検討することが内見率の向上に直結します。

温水洗浄便座を設置する前に確認すべき3つのポイント

温水洗浄便座を導入する前には、いくつかの物理的な条件を確認する必要があります。
これらの事前チェックを怠ると、製品を購入したにもかかわらず設置できない、あるいは追加の工事費用が発生するといった事態になりかねません。

確認すべき主なポイントは、トイレ内の電源コンセントの有無、便器のサイズや形状、そして給水管周りの作業スペースの3点です。
それぞれのタイプに応じた確認を行い、スムーズな設置計画を立てることが重要です。

トイレ内にアース付きの電源コンセントがあるか

温水洗浄便座は電化製品であるため、作動させるには電源が必要です。
まず、トイレ内にコンセントがあるかを確認し、もしあればアース端子の有無もチェックします。
水回りで使用する電化製品は漏電のリスクがあるため、アース付きのコンセントが推奨されています。
コンセントが全くない場合は、新たに電源増設工事を行わなければなりません。

この工事は電気工事士の資格が必要であり、無資格での作業は法律で禁じられています。
特に温風乾燥や脱臭といった消費電力の大きい機能が付いたモデルを検討する場合は、安定した電力供給が不可欠となるため、電源環境の確認は最初のステップとなります。

便器のサイズや形状は取り付けに対応しているか

便器と一言で言っても、そのサイズや形状は様々であり、すべての温水洗浄便座がどの便器にも取り付けられるわけではありません。
購入前に、現在設置されている便器の寸法を正確に測る必要があります。
特に重要なのは、便座を取り付けるための穴から便器の先端までの長さと、二つの取り付け穴の間の距離です。

多くの製品は標準的なサイズに対応していますが、隅付タンクや特殊なデザインの便器、旧式の製品の場合は取り付けられないことがあります。
メーカーのウェブサイトなどで対応可能な便器の寸法が公開されているため、必ず事前に確認し、適合する製品を選ぶ必要があります。

給水管周りに作業スペースが確保できるか

温水洗浄便座の設置作業では、トイレの止水栓を閉め、そこからタンクにつながる給水管に分岐用の金具を取り付けます。
この作業を行うためには、レンチなどの工具が入る程度のスペースが給水管周りに必要です。
トイレの空間が極端に狭かったり、給水管が壁際に近すぎたりすると、作業が困難になる、あるいは不可能になる場合があります。

無理な体勢での作業は、接続部の締め付けが不十分になるなど施工不良の原因となり、水漏れ事故を引き起こすリスクを高めます。
確実で安全な取り付けを行うため、また将来のメンテナンスや衛生管理のためにも、十分な作業スペースが確保できるかを確認しておくことが大切です。

温水洗浄便座の取り付けにかかる費用の目安

温水洗浄便座の導入コストは、本体価格に加え、設置を自分で行うか専門業者に依頼するかによって変動します。
DIYの場合は本体と工具の購入費用のみで済みますが、水漏れなどのリスクを伴います。
一方、業者に依頼すると確実な施工が期待できますが、別途工事費が発生します。

それぞれのメリットとデメリット、そして具体的な費用内訳を把握し、予算や物件の状況、自身のスキルなどを総合的に考慮して、最適な方法を選択することが求められます。

自分で取り付ける場合の費用内訳

DIYで設置する場合の主な費用は、温水洗浄便座の本体価格です。
本体価格は機能によって大きく異なり、基本的な洗浄機能と暖房便座のみのシンプルなモデルであれば1万円台から購入可能です。
多機能な高性能モデルになると10万円を超えることもあります。

これに加えて、作業に必要な工具を手持ちで用意できない場合は、その購入費用が発生します。
一般的にはモンキーレンチやドライバーセットがあれば十分で、数千円程度で揃えることができます。
製品によっては取り付け用の簡易工具が付属していることもあります。
費用を大幅に抑えられるのがDIYの最大の魅力です。

業者に設置を依頼する場合の費用相場

専門業者に設置を依頼する場合、費用は「本体価格」と「工事費」の合計になります。
取り付け工事のみを依頼する場合の費用相場は、おおよそ1万円から2万円程度です。
この費用には、既存の普通便座の取り外しと新しい温水洗浄便座の取り付け作業が含まれます。

古い便座の処分も合わせて依頼すると、別途2,000円から3,000円程度の処分費用がかかるのが一般的です。
また、トイレ内にコンセントがない場合は、電源を増設する電気工事が追加で必要となり、その費用は1万5,000円から3万円程度が目安となります。
確実性と安全性を重視するなら業者への依頼が適しています。

【DIY】自分で温水洗浄便座を取り付ける全手順

専門業者に依頼せず自分で温水洗浄便座を取り付けることで設置費用を大幅に節約できます。
作業自体は取扱説明書に従えばそれほど複雑ではありませんが水回りの作業であるため手順を誤ると水漏れなどのトラブルにつながる可能性があります。

ここでは作業を始める前の準備から古い便座の取り外し本体の設置給水管の接続そして最終的な動作確認までDIYで取り付けるための全手順をステップごとに詳しく解説します。

はじめに準備する工具と部材

DIYで温水洗浄便座を取り付ける前に、必要な工具をあらかじめ準備しておくと作業がスムーズに進みます。
必須となるのは、給水管のナットを締めたり緩めたりするためのモンキーレンチです。
また、古い便座やベースプレートの固定に使われているネジを外すために、プラスドライバーとマイナスドライバーも用意します。

作業中、給水管を外した際に管内に残った水が出てくるため、床が濡れるのを防ぐためのバケツと雑巾も不可欠です。
製品によっては専用の締め付け工具が同梱されている場合もあるため、作業を始める前に取扱説明書をよく読み、同梱品を確認しておきます。

Step1. 止水栓を閉めてから古い便座を取り外す

全ての作業の前に、まずトイレの止水栓をマイナスドライバーなどを使って時計回りに回し、水の供給を完全に止めます。
水が止まったことを確認したら、トイレタンクの洗浄レバーを操作してタンク内の水を全て流し切ります。
次に、現在ついている便座を取り外します。

便座は便器の裏側でナットによって固定されているのが一般的です。
このナットをレンチで緩めて取り外すと、便座を便器から持ち上げて撤去できます。
固着して外しにくい場合は、無理に力を加えず、潤滑剤を使用するなどの工夫が必要です。
この最初の止水作業を確実に行うことが、水漏れを防ぐ上で最も重要です。

Step2. 給水管に分岐金具を取り付ける

次に、止水栓からトイレタンクへ水を送っている給水管の途中に、温水洗浄便座本体へ給水するための分岐金具を取り付けます。
まず、モンキーレンチを使って、トイレタンク側の給水管ナットを緩めて管を外します。
この時、管内に残っている水がこぼれ出ることがあるので、下にバケツを置いておくと安心です。

そして、取り外した箇所に、製品に付属している分岐金具を差し込み、止水栓側とタンク側の両方に接続します。
各接続部のパッキンが正しく装着されていることを確認し、ナットをしっかりと、しかし締めすぎないように注意しながらレンチで固定します。

Step3. ベースプレートを便器にしっかり固定する

温水洗浄便座本体を便器に設置するための土台となるベースプレートを取り付けます。
便器後方にある二つの取り付け穴に、製品付属のボルトをゴムパッキンなどとセットで差し込みます。
便器の裏側からワッシャーをはめてナットで締め付け、ベースプレートを仮止めします。

この段階で、便座を仮置きしてみて、便器の先端と便座の先端が揃うようにベースプレートの位置を前後に調整します。
最適な位置が決まったら、ナットを本締めしてベースプレートが動かないようにしっかりと固定します。
この固定が甘いと、使用中に便座がずれてしまう原因になります。

Step4. 温水洗浄便座本体をスライドさせて設置する

便器にしっかりと固定したベースプレートの上に、温水洗浄便座の本体を取り付けます。
多くの製品は、ベースプレートの溝に合わせて本体をスライドさせてはめ込む方式を採用しています。
本体をベースプレートの奥までまっすぐにスライドさせ、「カチッ」というロック音がするまで押し込みます。
正しく固定されたかを確認するため、本体を軽く持ち上げたり、左右に揺らしたりしてみて、ガタつきがなく、ベースプレートから外れないことを確認します。

この取り付けが不完全だと、使用中に本体がずれたり外れたりする危険があるため、確実なロックを確認することが重要です。

Step5. 給水ホースを接続して水漏れがないか確認する

分岐金具の給水口と温水洗浄便座本体の給水口を、付属の専用給水ホースで接続します。
接続部のナットは、まず手で回せるところまで締め、その後工具を使って軽く増し締めする程度が適切です。
強く締めすぎると内部のパッキンが損傷し、かえって水漏れの原因となるため注意が必要です。

接続が完了したら、閉じていた止水栓をゆっくりと反時計回りに回して水を通します。
すぐに全ての接続部(止水栓と分岐金具、分岐金具とタンク、分岐金具と給水ホース、給水ホースと本体)から水が漏れていないか、乾いた布やティッシュを当てて入念にチェックします。

Step6. 電源を入れ正常に作動するかチェックする

水漏れがないことを十分に確認したら、最後に温水洗浄便座の電源プラグをアース線とともにコンセントに接続します。
本体の電源ランプが点灯したことを確認し、実際に便座に座るか、着座センサー部分を手で覆うなどして、便座が使用状態にあると認識させます。

その状態で、操作パネルの「おしり洗浄」や「ビデ洗浄」、「乾燥」などのボタンを押し、ノズルが正常に出てくるか、水やお湯が設定通りに出るか、温風は出るかなど、一通りの機能が問題なく作動するかをテストします。
全てのチェックが完了すれば、取り付け作業は終了です。

賃貸物件の空室対策に最適な温水洗浄便座の選び方

空室対策として温水洗浄便座を導入する場合、どのような製品を選ぶかが重要になります。
高機能で高価なモデルが必ずしも最適とは限りません。
考慮すべきは、オーナーにとっては導入コストとランニングコストのバランス、入居者にとっては使いやすさと必要十分な機能です。

ここでは、省エネ性に関わるお湯の加熱方式、日々の清掃性に影響する操作パネルの形状、そして入居者の満足度を満たす機能という3つの視点から、賃貸物件に適した温水洗浄便座の選び方を解説します。

電気代で比較する「貯湯式」と「瞬間式」

温水洗浄便座のお湯を作る方式には「貯湯式」と「瞬間式」の2種類があります。
「貯湯式」は、内蔵タンクに貯めた水をヒーターで温めて保温しておくタイプで、本体価格が安価な点がメリットです。
一方、「瞬間式」は、使用する瞬間にセラミックヒーターなどで水を温めるため、保温の必要がなく電気代を安く抑えられますが、本体価格は高めになります。

入居者が電気代を負担する賃貸物件では、省エネ性能の高い「瞬間式」の方がアピールポイントになり得ます。
初期費用を抑えたい場合は「貯湯式」、長期的な視点や物件の付加価値を重視するなら「瞬間式」という選択基準になります。

操作パネルの位置で選ぶ(本体袖付き・壁リモコン)

操作パネルのタイプは、便座の横に一体化している「本体袖付き」と、壁に取り付ける「壁リモコン」に大別されます。
袖付きタイプは、便座と一体なので設置が簡単で、リモコンの紛失や電池交換の手間がないという利点があります。
しかし、操作パネルの周りに凹凸が多く、掃除がしにくい点がデメリットです。
対して壁リモコンタイプは、便座周りがすっきりして清掃がしやすいのが最大のメリット。

ただし、リモコンを壁にネジで固定する必要があるため、壁に穴を開けられない場合は設置方法を工夫する必要があります。
清掃のしやすさは入居者の満足度にも影響するため、重要な選択ポイントです。

入居者に喜ばれるシンプルな機能で選ぶ

最新の温水洗浄便座には、フタの自動開閉、スマートフォン連携、除菌機能など、非常に多機能なモデルが存在します。
しかし、賃貸物件に設置する場合、必ずしも多機能である必要はありません。
多くの入居者が最低限求めるのは、「おしり洗浄」「ビデ洗浄」「暖房便座」といった基本的な機能です。

機能が複雑になるほど本体価格は上昇し、故障のリスクも高まります。
空室対策という目的を考えれば、これらの基本機能を備えた、操作が分かりやすく信頼性の高いシンプルなモデルを選ぶのが最もコストパフォーマンスに優れています。
過剰な機能よりも、基本的な快適性が確実に提供されることが重要です。

温水洗浄便座を設置する際に知っておきたい注意点

温水洗浄便座の設置は効果的な空室対策ですが、導入を決定する前に知っておくべきいくつかの注意点があります。
特にDIYで設置する場合に潜むリスクや、物件の構造上、設置が難しいケースの把握は不可欠です。

また、設置後の運用面、特に入居者が入れ替わる際の清掃やメンテナンスについても計画しておく必要があります。
これらの点を事前に理解し、対策を講じることで、設置後のトラブルを未然に防ぎ、長期的に安定した物件運用が可能になります。

作業ミスによる水漏れのリスクを理解する

DIYで設置する際に最も警戒すべきは水漏れの発生です。
特に給水管の分岐金具やホースの接続部において、パッキンの装着ミスやナットの締め付けが不適切だとそこから水が漏れ出す可能性があります。
わずかな水漏れでも、気づかずに放置すれば床材を傷めたり階下の部屋にまで被害を及ぼしたりする大事故につながりかねません。
その場合の修繕費用や損害賠償は、オーナーの負担となるのが一般的です。

取り付け作業に少しでも不安を感じる場合は、コストがかかっても専門業者に依頼するのが安全かつ確実な選択です。
プロに任せることで、こうした重大なリスクを回避できます。

3点ユニットバスへの取り付けは基本的に不可

単身者向けのワンルームなどでよく見られる、トイレ・洗面台・浴槽が一体となった3点ユニットバスの環境では、温水洗浄便座の設置は原則としてできません。
ユニットバス内はシャワーの使用などにより湿度が高く、防水仕様ではない電化製品を設置すると、湿気による故障や漏電、感電といった事故を引き起こす危険性が非常に高いためです。

ほとんどの温水洗浄便座メーカーは、浴室での使用を保証しておらず、取扱説明書でも禁止事項として明記しています。
一部には浴室設置に対応した製品も存在しますが、選択肢が限られ高価になるため、3点ユニットバスの物件では別の空室対策を検討するのが現実的です。

入居者交代時の清掃やメンテナンス計画を立てる

温水洗浄便座を設備として導入した場合、入居者が退去した後の原状回復の一環として、その清掃とメンテナンスが必要になります。
特に洗浄ノズルやその周辺、便座と本体の隙間などは汚れが溜まりやすく、次の入居者のために衛生的な状態を保つ必要があります。
ハウスクリーニング業者に依頼する場合、温水洗浄便座の分解清掃は追加料金の対象となることがあります。

また、電化製品である以上、経年による故障は避けられません。
数年後の交換や修理にかかる費用もあらかじめ想定し、長期的な修繕計画に組み込んでおく視点が、安定した賃貸経営には求められます。

まとめ

温水洗浄便座の設置は、入居者からの高い需要に応え、物件の競争力を高める有効な空室対策です。
導入を成功させるためには、まずトイレ内の電源や便器のサイズといった設置条件を事前に確認することが不可欠です。

設置方法には、コストを抑えられるDIYと、安全で確実な専門業者への依頼という選択肢があり、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で判断します。
製品選びにおいては、初期費用とランニングコストのバランス、清掃のしやすさ、そして入居者が必要とする基本的な機能が備わっているかを基準に選ぶことが合理的です。
設置後の水漏れリスクやメンテナンス計画まで考慮し、計画的に導入を進めることが重要です。