サービスルームとは?洋室・納戸との違いやメリット、使い方を解説
サービスルームとは、建築基準法で定められた「居室」の基準を満たさない部屋のことです。
間取り図では「S」と表記され、納戸とも呼ばれます。
この部屋の定義を理解すると、洋室との明確な違いがわかります。
サービスルーム付きの物件には、価格が割安になる可能性があるといったメリットがある一方で、設備や環境面での注意点も存在します。
この記事では、サービスルームの基本的な知識から、具体的な使い方まで詳しく解説します。
サービスルームとは建築基準法で「居室」と認められない部屋のこと

サービスルームの定義は、建築基準法上の居室に当てはまらないスペースを指します。
その意味は、人が継続的に使用する部屋としての基準を満たしていないということです。
居室と認められるためには、採光に必要な窓の面積が床面積の7分の1以上、換気に必要な開口部が床面積の20分の1以上あることが法律で定められています。
サービスルームは、これらの基準を満たしていないという理由で居室として扱われません。
そのため、不動産広告では2LDK+Sのように表示され、部屋数には含まれないのが一般的です。
なぜこのような区分があるかというと、居住者の健康や安全を確保するための法的な基準が背景にあります。
間取り図では「S」と表記される多目的スペース
不動産の間取り図において、サービスルームはアルファベットの「S」と表記されるのが一般的です。これはServiceRoomの頭文字を取ったものです。
例えば、リビング・ダイニング・キッチンの他に居室が1つとサービスルームがある間取りは「1LDK+S」や「1SLDK」のように表示されます。
この表記がある物件は、実質的に2部屋分のスペースがあることになります。
間取り図によっては「N(納戸)」や「F(フリールーム)」、「DEN(書斎)」といった表示がされる場合もありますが、これらも建築基準法上の居室の基準を満たさない多目的スペースという意味合いでは、サービスルームとほぼ同義として扱われることが多いです。
サービスルームと他の部屋との明確な違いとは?

サービスルームと他の部屋との違いは、建築基準法で定められた「居室」の条件を満たしているか否かという点にあります。
特に、生活の中心となる洋室や和室とは、採光や換気に関する法的な基準が明確に異なります。
また、収納を主な目的とする納戸という言葉もありますが、不動産広告上の呼称の違いであり、建築基準法上ではサービスルームと納戸に明確な区別はありません。
それぞれの部屋との違いを理解することで、物件の特性をより正確に把握できます。
採光や換気の基準が異なる「洋室」との違い
サービスルームと洋室の最も大きな違いは、建築基準法における「居室」の定義を満たしているかどうかです。
洋室や和室が居室として認められるためには、採光のための窓の面積が床面積の7分の1以上、換気のための窓や開口部が床面積の20分の1以上必要です。
この基準を満たさない部屋は、たとえ内装が洋室と変わらなくてもサービスルームと表記されます。
そのため、サービスルームは窓が非常に小さいか、全くない場合があります。
この採光や換気の基準の違いが、部屋の明るさや空気の通りやすさに直接影響し、それぞれの部屋の主な用途を左右する要因となります。
主な用途が収納である「納戸」との違い
サービスルームと納戸は、建築基準法上では明確な区別がなく、どちらも「居室ではない部屋」を指す言葉です。
一般的に、不動産会社が広告を作成する際の慣習として使い分けられているケースが多く見られます。
フローリング敷きで内装が普通の部屋に近いものをサービスルーム、収納スペースとしての意味合いが強い部屋を納戸と呼ぶ傾向があります。
しかし、この使い分けに厳密なルールはなく、同じような部屋でも不動産会社によって呼び方が異なる場合があります。
したがって、物件を探す際には名称だけでなく、実際の部屋の広さや設備、窓の有無などを確認することが重要です。
サービスルームがある物件を選ぶ3つのメリット

サービスルームがある物件を選ぶことには、価格面や活用面で大きなメリットがあります。
新築や賃貸のマンション、アパートから戸建の家まで、多くの不動産で見られるこのスペースは、同じような専有面積を持つ他の物件と比較して、購入価格や家賃が割安になる可能性があります。
また、居室とは異なる特性を活かし、収納や書斎、趣味の部屋など、ライフスタイルに合わせて多様な使い方ができる点も魅力です。
こうしたメリットを理解することで、より賢い物件選びが可能になります。
同じ広さの物件より価格が安くなる可能性がある
サービスルームは建築基準法上「居室」として扱われないため、同じ専有面積や部屋数を持つ物件と比較して価格が安く設定される傾向にあります。
例えば、実質的に3部屋使える「2LDK+S」の物件は、居室が3部屋ある「3LDK」の物件よりも販売価格や家賃が割安になることがあります。
これは、広告表記上、部屋数が少なく見えるためです。
1LDKにサービスルームが付いている場合も同様で、同じ広さの2LDKよりお得な価格で見つけられる可能性があります。
部屋の数よりも実際の広さやスペースの使いやすさを重視する人にとっては、コストパフォーマンスの高い選択肢となり得ます。
直射日光が当たらないため書斎や収納に適している
サービスルームは、窓が小さいか、あるいは全くないため、直射日光が当たりにくいという特徴があります。
この環境は、日光による劣化や日焼けを避けたいものを保管するのに非常に適しています。
例えば、大量の書籍を保管する書斎や、衣類を収納するウォークインクローゼットとしての用途に最適です。
また、美術品やコレクション、ワインセラーなど、温度や光の変化に敏感な趣味のアイテムを保管するスペースとしても活用できます。
このように、居室としてはデメリットになりがちな採光の少なさが、特定の用途においては大きなメリットとして機能します。
収納から趣味の部屋まで幅広い用途に使える
サービスルームは、その多岐にわたる活用方法が魅力です。建築基準法上の制約により居室としては認められませんが、居住者のライフスタイルに合わせて様々な用途に活用できる柔軟な空間です。例えば、季節家電やかさばる荷物をまとめて収納する大型の納戸として使うのはもちろん、机や椅子を置いて集中できる書斎やワークスペースにすることも可能です。
また、防音対策を施してオーディオルームや楽器の練習部屋にしたり、ヨガやトレーニング用のジムスペースにしたりと、趣味を楽しむためのプライベートな空間としての使い方も考えられます。このように、固定された役割がないからこそ、自分らしい使い方を見つけられるのがサービスルームの利点です。
知っておきたいサービスルームの3つのデメリット

サービスルームは多用途で便利な反面、いくつかのデメリットも存在します。
居室として設計されていないため、生活に必要な設備が整っていない場合があります。
特に、エアコンやコンセントの設置状況は内見時に必ず確認すべきポイントです。
また、建築基準法の採光・換気基準を満たさないことから生じる日当たりや風通しの悪さ、それに伴う湿気の問題も理解しておく必要があります。
これらのデメリットを知ることで、入居後のトラブルを避け、快適な空間作りに役立てることができます。
コンセントやエアコン用のスリーブがない場合がある
サービスルームは居室ではないため、コンセントの数が少なかったり、設置場所が使いにくかったりすることがあります。
また、エアコン設置に必須の配管用スリーブ(壁の穴)や専用コンセントが設けられていないケースも少なくありません。
そのため、書斎として多くの電子機器を使いたい場合や、夏場に部屋として活用したい場合には、延長コードが必要になったり、エアコンの追加設置工事が発生したりする可能性があります。
サービスルームの具体的な使い方をイメージし、レイアウトを考える上では、内見時にコンセントの位置と数、エアコン設置の可否を必ず確認することが重要です。
窓が小さい、または無いため日当たりや風通しが悪い
サービスルームが「居室」と認められない最大の理由は、採光や換気の基準を満たしていない点にあります。
そのため、多くのサービスルームは窓が非常に小さいか、あるいは全くなく、日中でも照明が必要なほど暗い場合があります。
また、窓がない、または開閉できない窓の場合は、空気の入れ替えが難しく、風通しが悪くなりがちです。
この環境は、日中の大半を過ごす部屋や、快適な睡眠環境を求める寝室として利用するには不向きな場合があります。
部屋の用途を考える際には、この日当たりと風通しの問題を考慮に入れる必要があります。
湿気がこもりやすくカビ対策が必要になる
窓が少ない、または無いことによる風通しの悪さは、湿気がこもりやすい環境を生み出します。
特に、マンションの北側に位置するサービスルームや、荷物を詰め込みすぎて空気の流れが滞るような使い方をしていると、結露やカビが発生しやすくなります。
これを防ぐためには、定期的に部屋のドアを開けて換気扇を回したり、除湿機やサーキュレーターを設置したりするなどの対策が必要です。
エアコンが設置できる場合は、除湿機能を活用するのも効果的です。
大切な衣類や本などを収納する場合は、湿気対策を怠らないように注意しなくてはなりません。
【目的別】サービスルームのおすすめ活用アイデア5選

サービスルームは、その特性を理解すれば非常に便利な空間として活用できます。
収納スペースとしてだけでなく、ライフスタイルに合わせて様々な部屋に変身させることが可能です。
例えば、静かな環境を活かして仕事に集中する書斎にしたり、趣味に没頭するための特別な空間を作ったりできます。
ここでは、具体的な活用アイデアを5つ紹介します。
これらの例を参考に、自分の暮らしに合ったサービスルームの使い方を見つけてみてください。
集中できる環境で仕事や勉強をする書斎スペース
サービスルームは、外部からの光や視線が入りにくいため、静かで落ち着いた環境を作りやすいという特徴があります。
この特性は、在宅ワークやオンライン会議、資格試験の勉強など、集中力を必要とする作業に最適な書斎スペースとして活用できます。
机や椅子、本棚などを設置すれば、プライベートなワークスペースが完成します。
リビングの一角で作業するよりも、仕事とプライベートの切り替えがしやすくなるでしょう。
コンセントの数や位置を確認し、必要であれば延長コードを用意するなど、快適な作業環境を整えることがポイントです。
衣類や季節物をまとめて収納するウォークインクローゼット
サービスルームの最も一般的な活用法の一つが、大容量の収納スペースとしての利用です。
ハンガーラックや収納ケース、棚などを自由に配置することで、まるでウォークインクローゼットのように使うことができます。
衣類だけでなく、季節家電(扇風機やヒーター)、スーツケース、アウトドア用品など、普段使わないけれど場所を取るものをまとめて収納するのに便利です。
部屋全体を収納として使えるため、各部屋のクローゼットがすっきりし、生活空間を広く保つことにもつながります。
湿気対策として、除湿剤を置いたり、定期的に換気したりすることが大切です。
シアタールームや音楽鑑賞など趣味に没頭する部屋
窓が少なく外光を遮りやすいサービスルームは、趣味に没頭するための部屋として理想的な空間です。
プロジェクターとスクリーンを設置すれば、本格的なホームシアターとして映画鑑賞を楽しめます。
また、遮音性や防音性を高める工事を施せば、周囲を気にせずに楽器の演奏や音楽鑑賞ができるオーディオルームにもなります。
コレクションを飾るディスプレイルームや、フィットネスバイクを置いてプライベートジムにするなど、自分の好きなことに時間を使える特別な部屋として活用することで、日々の生活がより豊かになります。
おもちゃを広げて遊べる子供のプレイルーム
サービスルームを子供の遊び場、いわゆるプレイルームとして活用するのも良いアイデアです。
リビングにおもちゃが散らかるのを防ぎ、子供が思い切り遊べる専用の空間を確保できます。
床にクッション性の高いマットを敷いたり、おもちゃを整理しやすい収納ボックスを用意したりすることで、安全で片付けやすい環境を整えられます。
子供の成長に合わせて、将来的には勉強部屋へと使い方を変えていくことも可能です。
ただし、換気がしにくいため、定期的にドアを開けて空気を入れ替えるなどの配慮が必要です。
家族や友人が泊まりに来たときのゲストルーム
普段は書斎や収納スペースとして使いながら、家族や友人が泊まりに来たときだけゲストルームとして活用する方法もあります。
ソファベッドや布団を置くスペースさえ確保しておけば、来客時にプライベートな空間を提供できます。
ただし、サービスルームはエアコンが設置されていない場合も多く、夏場や冬場の宿泊には注意が必要です。
また、換気が十分でないため、寝具の湿気対策も考慮しておくと良いでしょう。
あくまで一時的な宿泊スペースとして割り切り、快適に過ごせるような工夫をすることが求められます。
サービスルームを利用する上での注意点とよくある質問

サービスルームを快適に利用するためには、いくつかの注意点を理解しておくことが重要です。
特に、エアコンの設置可否やその工事に関するルールは、物件の種類によって異なるため事前の確認が欠かせません。
また、「居室ではない」という法的な位置づけから、子ども部屋や寝室として常時使用することの是非についても疑問が生じやすいポイントです。
ここでは、サービスルームの利用にあたってよくある質問とその回答、注意すべき点を解説します。
サービスルームへのエアコン設置は可能?工事の注意点
サービスルームへのエアコン設置は可能ですが、いくつかの確認が必要です。
まず、エアコン用のスリーブ(配管穴)と専用コンセントが壁に備わっているかを確認します。
これらがない場合は、壁に穴を開ける工事や電気工事が必要になり、追加費用が発生します。
賃貸物件の場合は、工事を行う前に必ず大家さんや管理会社の許可を得なければなりません。
分譲マンションであっても、外壁への穴あけは共用部分に関わるため、管理規約でルールが定められている場合があります。
後々のトラブルを避けるためにも、契約前や工事前に規約を確認し、必要な手続きを踏むことが重要です。
子ども部屋や寝室として利用しても問題ない?
建築基準法上、サービスルームは居室ではないため、採光や換気の基準を満たしていません。
しかし、これを個人的に子ども部屋や寝室として利用すること自体を直接罰する法律はありません。
ただし、日当たりが悪く、空気がこもりやすい環境は、特に長時間を過ごす子どもの健康や快適な睡眠に影響を与える可能性があります。
もし子ども部屋や寝室として利用する場合は、照明を工夫して明るさを確保したり、定期的な換気や除湿器の使用を徹底したりするなど、環境を整える工夫が必要です。
こうしたデメリットを理解した上で、利用方法を慎重に検討することが求められます。
まとめ
サービスルームは、建築基準法で定められた採光や換気の基準を満たさないため「居室」とは扱われない部屋です。
間取り図では「S」と表記され、納戸と呼ばれることもあります。
同じ広さの物件に比べて価格が割安になる可能性がある、収納や書斎など多目的に使えるといったメリットがある一方、エアコンやコンセントがなかったり、湿気がこもりやすかったりするデメリットも存在します。
これらの特性を十分に理解し、自分のライフスタイルに合った活用法を見つけることが、サービスルーム付き物件を有効に使うための鍵となります。
